コラム

 はじめに

 これまでは総代表等の情報コラムとして、主に内外との研究開発競争や国際規格業務経験と専門家交流や各種相対的比較調査を通じて長年感じていたことを「鉄道分野の一技術士から見える世界の常識・日本の非常識」と題して、交通関係の一部研究者や技術者向けに紹介してきた。その後、次代の鉄道界関係者への応援として、特に中長期的視点で内容を見直し、JRIPEXとしての先進性や独自性、有用性や専門的技術の裏付けの観点で内容を精査しこのコラムで転載することに改めた。その結果、鉄道界の一般論と類似内容が減り、一般論を否定するものでは無いが今の日本で異論と感ずるであろう内容の掲載が多くなるものと推定する。改めてお断りするが、異論の目的は日本と鉄道産業界の一般論への否定ではなく、持続的発展と長期的視野に立ったJRIPEXの先導的改革応援にある。背景に、当初は国内外含めて異論扱いと反対の嵐に晒されながらも鉄道技術研究者やメディア等からの理解と支持を増やし、半世紀以後の現代でその先進性の評価が高い近代都市や新幹線構想を推進した後藤新平や十河信二等の鉄道先人の方々、並びに日本人の文化的プレゼンスを高めた新渡戸稲造等の逆境にめげない勇気ある先導への敬意にある。そこで、先ずは小職者の恥ずかしながらの異論と方策の囁きとして聞いて頂ければ本望である。そして、日本の半世紀後の国づくり・街づくりを夢見る一老技術士のたわごとに多少でもご支援頂ければ幸いである。

 さて、この11月のCOP26でCO2排出削減努力の歴史的決議がなされた。次代は地球温暖化による異常気象の多発や大災害の発生が懸念されている。交通産業界では今後、日本での実効あるモーダルシフト政策が必須となるであろう。過去20年超の政策停滞と異なり、今後は外圧での実効的技術導入への新局面に入ることが推察される。ここでのコラム内容が、おそらく現代の日本の多くの方々にとって、単なる鉄道・交通好き、技術・研究開発好きの老人達による一面的内外比較論や独断的な囁きにも感じられるだろうが、それこそ先進的異論として適切な話題選定である。次代の難題に忖度せずに立ち向かって生きざるをえない次代の日本と名も無き若者たちにどう伝えられるかどうか、現代の一般市民の良識と常識、技術立国の知識と国際感覚による多様な意見の取捨選択にこそ、このコラムの価値判断を委ねてみたい。

コラム一覧

① 世界の交通戦略と交通産業動向

 

1.はじめに

 世界報道自由度ランキングが途上国並みの日本では国益の正論や真実を知ることは困難である。例えば、欧州等の主要国では公共サービスの安易な民営化の弊害に気づき、特に国土基幹産業の再公営化を進め対処して久しいが、日本ではそうした潮流の政策論争や報道は未だ無い。戦後80年近い今も米隷属の人質二世議員による占領代理統治による国民資産の国外流出や豊かさの内部崩壊が続いている。そこで、初回のコラムでは小職の国際会議等の合間に時々見聞きした内外交通政策の小藩分立問題、特に①鉄道産業、②新幹線、③貨物鉄道、④交通モード間、⑤国土と都市軸の公共交通政策、⑥新鉄道による国づくり等々、日本の鉄道交通の「小藩分立問題」から話を始めたい。

 

以下、修正中


2. 鉄道産業のグローバル化と小藩分立
  …KW: 日英、民営分割、 ビッグ3、合従連衡、規格化、一帯一路、中国中車、米保護主義

3. 日本の小藩分立史:国土軸の分割侵略と統合と民営分割

  …KW:  明治の列強民営分割、大正の統合国鉄、敗戦代理統治、令和の民営分割、欧州の連通連携、米の公共交通破壊

4. 産業・環境・防災の貨物鉄道活用と小藩分立
  …KW:  世界の主要国は貨物、鉄道こそ貨物、地勢とハブ化競争、空港・港湾配置と国土軸、大型化&ダブルスタック&RoRo

5. 列島国土の生活圏・交通権の旅客鉄道活用と小藩分立
  …KW: 明治の分割、大正の統合、3種のインター化、大陸間、自転車、HEV

6. 次代の国土基盤公共インフラと鉄道交通:政策と小藩分立
  …KW: 都市ツール、国民資産、防災、省土地、産業競争力、国防兵站、環境大幹線、武蔵新幹線、武相軸と都市軸と産業軸

7. 次代の日本近代化:連通連携国土軸と新鉄道活用

  …KW:小藩分立対策(自立独立連携、世界商圏連携視点・長期強国連携視点、国益強国連携視点、再公営化:計画・財政・推進・育成)

 世界の産業と市場は経済のグローバル化と自由化により、合従連衡が国境を越え拡大している。一方、鉄道発祥の英国や新幹線発祥の技術先進国の日本では、20世紀末にレーガン・中曽根・サッチャーの各政権が掲げた小さな政府と民営化という国際潮流の下、国際戦略上で近視眼的でヒステリックと思える民営分割等が短期間に推し進められた。特に、過度な地域別・分野別の分割民営化となった英国国鉄では各社が安全・実業軽視・短期利益追求型・文経優位の内向き経営に偏り、強みの各国の技術産業分野が一気に弱体化し、その後の国際企業ビッグ3による草刈り場と化した。直後の大事故を経て英国民が気づいた時には、外資に国内市場を占められ、資産や技術力が国外流出し、保守や安全の技術に研究機関や鉄道主力工場等の産業界まで消滅していたのである。安易な民営化の弊害に気づいた欧州の国々では基幹的公共サービス事業の再民営化や上下分離策を進め、キャメロン政権以降の英国等でも国立鉄道大学や鉄道学部の再創設や支援強化も進め、産業再興して久しい。一方、日本では国鉄民営化で地方から衰退が拡がり、後に運輸大臣を務めた川崎氏ら与党議員等が政界引退後に「行き過ぎた民営分割は見直しを要す」の発言をしたが、未だ再民営化には至っていない。逆に、敗戦80年近い今も占領政策(日米合同委員会・対米従属・プレスコードと偏向報道・3S愚民化政策・御用委員会…)等による代理統治が続き、国や報道機関の上部・官邸・高級官僚ほど忖度が蔓延り、真の独立と真逆の弱体化政策(横田基地と首都圏空域、貨物鉄道や新幹線等の列島連通連携国土軸の分割民営化、3公社民営化や世界企業弱体化(47→1社)が続き、自動車偏重物流と非効率化、地方空港や港湾のハブ国外移転…)等に至っている。国際化とは無防備な市場開放や米中隷属ではない。自由市場下における国際化とは国益と産業生き残り戦略の経済戦争を意味する。国や与野党の国益放任は売国や亡国に通じないか。

 話を鉄道分野に戻す。日本は世界初の高速鉄道を成功させ、斜陽産業と揶揄された鉄道産業を再興させるだけでなく、メガロポリスが連なる国土軸や都市圏内で鉄道が最も環境面、事業面で、土地活用面、都市機能面で優る交通手段であることを世界に示した。市場自由化の現在、米国のエシュロンとGAFAによる寡占化に加え、今世紀に入り恫喝的で不平等著しい中華人民共和国とにますます支配されつつある。世界の鉄道産業については、これまでビッグ3と称されたアルストム(フランス)、シーメンス(ドイツ)、ボンバルディア(カナダ・欧州連合)の大企業誕生での域内寡占化が際立ったが、今やそれらを国策覇権主義の中国中車が一気に追い抜き世界最大となった。世界の鉄道市場を席捲する中国中車や前述のビッグ3のドイツとフランスは、日本等の有力他社を国際市場から排除する国際規格化や認証制度を世界戦略ルールとして先導し始めた。特に中国の一帯一路戦略以降、太平洋覇権の中米2分割論同様、中欧連携による世界鉄道市場の2分割論での寡占化前兆の感が増している。

 こうした中、鉄道分野では政府のオールジャパンの掛け声で輸出が強化された。一方で、輸出に必須の高速鉄道認証試験線が国内で欠落し、鉄道総合技術大学等の高度専門人材の育成機関の消滅からも久しい。そのため、オールジャパンの実態は貧弱で、日本への短期研修や熟練者派遣の陰で、中国や韓国等の周辺国の施設や鉄道・交通大学に委ねる部分が生じている。将来の人脈と事業展開の機会まで譲るような状況にあり、委託でのピンハネ・国益軽視の事業も少なくない。また、日本では国鉄の地域分割から30年余り、鉄道産業会も地域別に系列化され、世界的な合従連衡とは真逆の分割細分化と内向きの小藩分立が続いている。欧州等、世界の鉄道先進国の高速鉄道では国を越え相互乗り入れし、ハブ空港やハブ港湾に結節し、3時間圏600km圏市場を国を越えて拡大させている。一方、日本では広域首都圏4000万人の大市場が東京の東西南北にあるにも関わらず、東西の新幹線が乗入れもせず、ハブ空港にも結節せず、都心一極集中の東京駅で分断乗り換えを要する、基幹国土軸が都心で分断した異様な状況が長年続いている。

 さらに、世界の鉄道事業は貨物鉄道こそ主力であるが、加工貿易の主要工業国であった日本では、東京・横浜港と神戸港を結節する世界標準の貨物鉄道専用線が欠落したままであり、狭軌の貧弱な旅客線を借りる生産性の低い軽軸重・短編成の貨物列車で遠慮がちな走行を要している。環境先進国でありながら、省庁統合で物流モーダルシフト政策が弱体化し、真逆のトラック偏重の非効率な政策となり、国内物流コストや外部不経済を数倍以上高め、産業空洞化を招き、交通分野CO2の高排出も30年以上続けている。

 しかし、こうした日本の異様で歪な高コスト物流構造は海外の当該国際会議でこそ目立つのだが、世界報道自由度ランキングが中位の日本は、官庁等の記者クラブや政財界への忖度と3S政策なのか、メディアや政財界、与野党からこれらが発せられることはほぼ無い。こうして国内産業の長期低迷を招き、地方港湾等の国際化乱立でハブ港湾が周辺国に流出し、産業競争力の低下が30年余り続いていても国民は無関心でいる。はたして、この国に日本のモノづくり産業基盤の再興、交職住の創出、都市と地方の国土利用、地球環境の現実的で効果的な対策等を長期的・国家戦略的な視点で政策立案する研究者や議員や官僚がどれだけいるのだろうか。昨今の幼稚二世議員や勘違い高級官僚の私利私欲の不祥事、慣れ合い忖度メディアの偏向報道等を見て、益々考え込んでしまう。

 次に、鉄道輸出で注目される新幹線だが、一抹の不安を感じている。世界は350km/h級規格の建設となったが、日本国内では60年昔の旧規格新幹線(A幹~B幹)の在来線並み運行(都内110km/h)の弊害が続いている。角栄時代の我田引鉄的な建設ツール(公団→機構)と整備新幹線(260km/h級,バブル的な赤字路線含む)が見直されることなく、国鉄政治線の御旗が今も掲げられている。一方で、武相軸沿線1100万人(世界有数のDID都市軸:北関東・川越~立川~橋本~湘南・小田原)地域は、日本の連通国土軸形成に最も優れ、京阪神並みの地勢だが、近代的高速インフラが際立って貧弱な格差地域で、巨額の外部不経済が長年放置され続けている。結果として、新幹線や空港や高速道の整備が進んだ地方中都市30分圏や阪神地域との格差が桁違い(外部不経済比較)に拡大し、首都圏4000万人の大災害リスクや地方消滅リスク、少子化リスクの今日でも見直しもされず、次代の総合政策的な試案の動きさえ見当たらない。

 公共交通と都市や社会の盛衰、特に鉄道と都市の盛衰は密接な相関がある。私事、これまで、公私両面で内外の鉄道や都市の盛衰を半世紀近く見続け、それを実感し、以来、交職住という視点の造語を用いて都市の盛衰を検証してきた。私の経験と予測が正しいのなら、日本の状況放置は、地方から急激な衰退をさらに加速させ、過疎過密と都市化が更に進み、大都市部の住宅狭小化で少子化、物流面等での桁違いの外部不経済、国家衰退がさらに悪化するだろう。かつての大災害に無策のリスボンの国家衰亡の事例同様、減災展都等の根本部分が無策の日本も国家衰退の危機さえ感ずる。

 米占領の代理統治と分断策(左右プロパガンダ、イデオロギー、中曽根の民営民活、市場開放)等から30余年。今や国政を預かる肝心の議員たちにどれだけ国益や防衛や防災に危機意識があるのだろう。産業構造面では実業経験を有する各分野の真の技術専門家、例えば技術士や科学者等の専門家の議員がどれほどいるのだろうか。私には多くが小選挙区指向の場当たり二世や芸能的議員に見え、特に真の技術士など殆ど見当たらない。国のシンクタンクや審議会も同様である。日本は、小選挙区指向の国策/国益/国防軽視的な二世議員等と、天下り利権の各審議会や内向き第三者委員会、並びに各記者クラブに代表される忖度報道メディア等により、国家や産業基盤の弱体化が懸念されていると思うが、どうだろう。国政を預かる議員や官僚には、せめて次代の日本再興のため、各分野の真の専門家たちの声と叡智を集め、私利私欲に流されず、真摯に公正に検証し実行する度量が欲しい。

 例えば交通分野について、北海道から九州までの基幹交通軸(支線以外)の特に、次世代物流インフラ(世界標準貨物鉄道線+大型兵站/大型自動車搬送対応の重軌道)の下部構造部分については、地方存亡や国防面、防災面を世界情勢や国益を含め長期視点で総合的に検証し、国が責任をもって死守することが望ましい。例えば欧州等の主要国同様に、主要な道路やハブ港湾やハブ空港等と基幹交通軸の鉄道や道路の下部構造は連携結節させ、連携協働を図る国家資産として、国の同一財源の下で維持する枠組みへの見直しが急務である。即ち、英国の衰退例に学び、成長する主要国のモーダルシフト策に学び、中曽根民活の行き過ぎた負の分断策について、例えば三島/貨物の基盤国土軸を地方の高齢住民に負担を強いるのではなく、国が責任をもって死守する枠組みこそ現代の世界の正論ではないのか。この分野の利権や縦割り財源を見直し、国土・建設・防災・運輸・防衛の下部構造の予算配分を見直し、国際情勢や地方衰退や防災対策面での即応性や柔軟性を図ることが急務でないのか。例えば運輸機構(旧公団)等については、有事の防災や防衛ロジステクス、さらには平時の過疎過密対策上の総合的な下部ツールへの見直しと関係省庁との協働も要していると思うのだがどうだろう。真のオールジャパンならば、こうした種々の構造的な日本問題、東京問題と世界情勢を直視し、各現業経験を含む真の各分野の専門家の叡智を集め、長期視点、国益視点、国防視点、生活者視点、財源有効活用視点で小藩分立・縦割り・天下り利権を見直すこと、国の国益を総合政策として反映させる公正で効率的な次代の仕組みづくりこそ必須と考えるが、どうだろう。

 あらためて総論を述べると、敗戦から80年近く経たが、日本の支配構造の上に立つ者(小選挙区指向二世議員議員、メディア、財界、学協会)ほど古典的な前例主義等(官邸忖度・対米対中隷属・国益軽視政策・見ざる言わざる聞かざる・お飾り不勉強審議会・内向き第三者委員会・国際状況や科学技術動向を軽視する周回遅れ内向偏向教育・現場や科学技術に疎い高学歴前例踏襲管理組織…)の見直しが必須である。せめて各現業を知る真の各分野の技術士等の専門家・科学者の全叡智も収集し、与野党合同の救国内閣で大枠をまとめあげ、次代の日本の大改革を進めて欲しいものだと切望する。

 明治の大失政である鉄道の地域民営分割(本州:英国、北海道:米国、九州:独国、私鉄:…)、その後の列島分割侵略危機と混乱(軌間、運行方式、規格…)があったが、これを解決したのが近代化の父・後藤新平とその策(幹線系の全国鉄統一・国鉄一家・鉄道専門職中央教習所や鉄道研究所の設立・国産化・弾丸列車・帝都復興…)である。そして、敗戦期の米軍占領政策(占領代理統治の国鉄、主要駅GHQ支部化、中央教習所の新党労組育成、朝鮮動乱後の梯子外しと教習所や研究所の廃止)の混乱期には後藤の近代化策廃止案が出るが、これに反対した下山総裁が怪死し大量首斬り等の暗黒期となる。この混乱の中、後藤の策を強化し再興したのが新幹線の父・十河信二の策(研究所と鉄道大学の移転集中強化、国鉄一家、映画:大いなる旅路、新幹線、動力や電算の近代化)である。即ち、日本は戦前の後藤と戦後の十河の傑出した鉄道先人により列強侵略の危機を脱し、高度成長を遂げたのである。しかし、昭和末期の民営分割で近代化先人の策や功績の検証と報道も無く、専門職幹部教育も途絶え、明治初期同様の国土軸民営分割・国民資産流失・国益軽視の国となって40年と久しい。欧州等の国土基幹事業の再民営化と真逆の日本では専門職大卒幹部や現場の実業を知る真の専門家の知見が軽視される一方、御用コメンテータ誘導策と愚民化が花盛りだ。その結果、同じ敗戦国だったドイツに無い占領代理統治機構(日米合同委員会とプレスコード、横田基地や首都圏空域、偏向報道や3S政策:愚民白痴化等)が敗戦80年でも残り続け、官公労解体後は部内監視も消え、私利私欲や忖度、偽りの高学歴二世議員や与野党の国益軽視も目に付く。せめて次代の日本には私欲・保身・忖度の無い建国の専門職大卒幹部の育成復活と真の専門家による国益重視の監視と政策活用が望まれる。

以上、修正中

 

 以上のように、日本の交通分野には種々の小藩分立問題がある。そこで高齢者となった誉生は日本のこうした非常識部分に焦点を当て、次代の日本の近代化のために、後藤新平や十河信二、新渡戸稲造ら傑出した近代化先人に学び、策を考え、情報交換し、人材育成を考え、連携し、次代の先導者に巣立つよう支援したい。そして上記試案が平成~令和期の先行検討例として国政当事者等の目に留まり、次代の国や街づくり先行試案として、あるいは論点の踏台として一つでもご審議頂けるなら、一分野の一技術士の徒労の夢の策であっても望外の喜びとなるだろう

            川口技術士事務所代表:川口 清 (経歴等:元鉄道総研jpg,雫石町出身2014pdf1,jpg, 2024pdf2,jpg)

参照
①高速鉄道開発における日英比較(東大) pdf

武蔵相模間の連通国土軸補完研究:武蔵新幹線構想(武相軸連:沿線周辺首長等向け検討資料 )pdf

 

2021年11月17日